
- 2016年3月 NHK 「想いのかけら」 主題歌 & 声優:みちる役
- 2016年3月 TOKYO MX 「美少女遊戯ユニット クレーンゲール」 主題歌 & 声優:響子役
- 2016年5月 テレビ東京「カードファイト!!ヴァンガード ストライドゲート編」声優:少年役
- 2016年10月 TOKYO MX 「美少女遊戯ユニット クレーンゲールギャラクシー」 声優:響子役
- 2016年12月 TOKYO MX 「ALL OUT!!」声優:女子生徒役
- 2016年12月 TOKYO MX 「ナゾトキネ」声優:うど花ちゃん役
- 2017年1月 劇場版アニメ「ゴーちゃん。~モコとちんじゅうの森の仲間たち~」声優:看護師役
- 2017年1月 角川ゲームス配信アプリゲーム「STARLY GIRLS-episode Starsia-」声優:ルナ役・チタニア役(台湾版限定キャラ)
- 2017年4月 TOKYO MX 「ラブ米-We Love rice-」声優:グル江役
- 2017年7月 TOKYO MX 「クリオネの灯り」声優:ナナミ役
- 2017年10月 PS vitaゲームソフト「塔亰Clanpool」声優:東條アキラ役


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プロシンガーになるという希少な夢を叶えるような人間に、「なぜ歌が好きなのか?」という問いかけは愚問だったかもしれない。
佐々木李子は少し難しそうな顔をしたあとに、「歌うことは運命みたいなもの」「いつ音楽を好きになったのかはわからない」と笑った。
1997年生まれ、秋田県出身。大人びた雰囲気のなかにほんの少しの幼さを残す小柄な19歳は、「どんな歌でもうたえるシンガーになりたい」と、自身の音楽哲学を語ってくれた。歌とは、演じること。自分だけが表現できる歌の道を極めることが、彼女の信じる未来だ。
擦り切れた心の闇をエモーショナルに叫んだロックナンバー「カサブタ」。
絶望の淵に光を照らす強く優しいバラード「想いのかけら」。
キラキラとした思春期の純真を歌ったガールポップ「ドリームクライマー」。
実際メジャーデビューシングルに収録された3曲は、見事に三者三様だった。歌詞とメロディ、そしてアレンジが織りなす「音の物語性」に、それぞれの色付けがなされている。佐々木李子は本人が言うとおり、歌の機微を敏感に感じ取りながら、豊富な表情・表現の引き出しで曲を彩っていくタイプのシンガーだ。圧倒的な歌声で楽曲を支配するのではなく、あくまで音が紡ぐ物語の語り部たらんとするスタイル。彼女は歌が「どう伝わるか」を重視する。
こうした佐々木李子の「歌を演じる」ルーツは、なんといっても舞台女優の経験にあるのだろう。5歳からダンス教室に通っていたという彼女は小学6年生のとき、約9,000人が応募したオーディションを勝ち抜きミュージカル「アニー」のアニー役を射止めている。当時からブロードウェイに憧れたり、映画「バーレスク」の影響を受けたりしながら、ショーミュージックを中心にたくさんのR&Bやジャズ、ロックなどに触れる日々を送ってきた。
その一方で、彼女は日本のポップミュージックにも愛を注いできた歴史を持つ。中学時代にはボカロ、高校時代にはアニソンをクラスメートと語り合い、他ジャンルの音楽よりも物語成分が多い「独特の言語感覚」や「映像と音楽の融合」の薫陶を、たっぷり受けてきたのだ。
そしてある日、彼女は自分の将来について大きな決断をくだした。
「ミュージカル女優のままでは歌える楽曲に限界がある……舞台で培ったダンスの経験を活かしつつ……ロックもアニソンも、自分の好きな楽曲にチャレンジできるソロシンガーになりたい」
幼少の頃から様々なジャンルの音楽に分け隔てなく触れてきたことで、「苦手な曲がないのが私の武器」と言い切る佐々木李子。
そんな彼女の選択は、舞台女優としての成長ではなくどんな音楽でも歌えて踊れるプロシンガーへの挑戦だった。
夢が定まるまでには相当悩み、周囲に迷惑をかけることもあったそうだ。家の屋根に上がって星を見上げた夜もある。これまで集団でステージに立つことが当たり前だった自分が、たったひとりになることへの恐怖もあったという。が、この選択に「歌が好き」「演じることが好き」であることに対する裏切りや嘘は一切ない。むしろ、古今東西の音楽を吸収してきた自分の可能性のすべてをぶつけられる、最適解を見つけ出したと言えるだろう。
加えて彼女は歌と演技を追求するために、声優への挑戦もスタートさせた。自分と同じミュージカルをルーツに持ち、役者としてもソロシンガーとしても、グループアイドルの一員としても第一線で活躍するとある女性声優に、感銘を受けたからだ。
「自分の気持ちに嘘をつかず、歌を一生続けていきたい。音楽を追求したい」
幼い頃から「歌うこと」と「演じること」の意味を考え続け、ついにプロシンガーという第一歩を踏み出した19歳。彼女は今、「演じて」「歌った」先にある、「自分らしさ」を探し求めようとしている。
それは表現者のひとつの到達点だろう。他者と自己の垣根を突破する瞬間は、歌においても演技においてもそうそう見られるものではない。
しかし佐々木李子という人物には、その困難な目標もいつかは達成できると期待させる魅力がある。彼女の「突き進んでいれば道は開ける」という真っ直ぐで貪欲な生き様が、偽りなく伝わってくるからだ。6月22日、メジャーデビューは彼女にとって大切な出発の日だ。
TEXT BY 西原史顕(音楽ライター/元リスアニ!編集長)
